新「会社法」成立、来春施行 起業・産学連携を促進 買収防衛環境も整備
2005年 6月30日 (木) 03:26
企業経営ルールを定めた商法などを再編した会社法が二十九日、参院本会議で可決、成立した。改正を重ねて「つぎはぎだらけ」と批判されてきた会社制度の関連法の抜本改正であり、政府は産業政策の観点で進めてきた改革の総仕上げと位置づける。企業の創業と再編による効率的な経営を促して国際競争力の向上を図る一方、敵対的な買収に対する防衛環境も整備した。一部を除いて平成十八年春に施行される見込みだ。(吉村英輝)
■最低資本金撤廃
創業を促すため、新法では、最低資本金制度を完全に撤廃した。
現行法では、会社を設立するための最低資本金は、株式会社で一千万円、有限会社で三百万円で、ベンチャー企業などから「起業の妨げになっている」との声が強かった。
経済産業省が五年間の時限立法で、「一円起業」制度を導入したところ、十四年に約八万五千社にまで落ち込んだ年間起業数は、十六年には約十万社に回復。経産省幹部は「少額資本金へのニーズは予想以上」と新法に期待をかける。
また、大学教授などアイデアや技術を持った人間が大企業と組んで創業した際、出資額以上の利益配分が受けられるようになる「有限責任の合同会社(LLC)」制度も新設された。柔軟な運営ルールにより、ベンチャー起業や産学連携が促進されるとみられる。
■消える有限会社
戦前から続いた日本の会社の形態も大きく変わる。大企業は株式会社(約百十万社)で、中小企業は有限会社(約百八十万社)という区分があったが、「名称からくる偏見が多い」との不満が有限会社の経営者には強かった。このため、有限会社法を廃止し、株式会社に一本化する。
有限会社には、取締役会開催の義務や監査役の設置義務がなく、任期規定もなかった。そこで株式会社を株式の「譲渡制限会社」と「公開会社」に分け、制限会社については、従来の株式会社で義務付けられていた取締役会の設置を任意とし、設置しない場合は、従来三人以上としていた取締役の人数を一人以上とした。
これらは、会社運営のルールである「定款」に改めて盛り込む必要がある。また、取締役の解任決議は、従来の三分の二以上から過半数で可能とし、株主総会のチェック機能も強化した。
■M&A活性化
企業の再編促進については、持ち株会社の解禁(九年)で柔軟な組織再編を可能としたが、今回の新法では組織を超えた企業の合併・買収(M&A)の活性化を目指している。
対象企業の資産規模が合併企業の5%以下であれば、取締役会決議のみで合併できる現行規定を20%以下に引き上げ、経営統合を容易にする。また、完全子会社に近い関係にある会社間での組織再編は、子会社の株主総会決議を不要とした。
一方、合併の際に消滅企業の株主に現金や親会社株など、存続会社の株式以外の財産を対価として認める「三角合併」の施行は一年延期された。ニッポン放送株をめぐる買収合戦を背景にして、敵対的買収に対する警戒が急速に盛り上がったためだ。このため、新法では買収者以外の株主の議決権比率を経営側が強制的に引き上げ、敵対的買収を抑止できるようにする「ポイズンピル(毒薬条項)」の措置も追加導入するなどし、まずは「守り」を優先した。
goo ニュース - (読売新聞)
有限会社廃止・買収防衛…参院法務委が会社法案可決
2005年 6月28日 (火) 12:34
参院法務委員会は28日午前、有限会社制度の廃止や企業の敵対的買収への防衛策を盛り込んだ会社法案を自民、公明、民主各党の賛成多数で可決した。29日の参院本会議で成立する見通しだ。
同法案は、有限会社制度を廃止して株式会社制度に吸収するほか、新たな会社設立を促すため、起業の際の最低資本金制度を撤廃して「1円起業」を可能とするなどの内容だ。敵対的買収に対抗するため、買収者の議決権比率を低下させる企業防衛策「ポイズン・ピル(毒薬)」の選択肢も拡大する。
民主党は28日の委員会に、外国で設立されたが主に国内で活動する「疑似外国会社」の商取引を制限する規定を、政府案から削除する修正案を提出したが、否決された。
goo ニュース - (産経新聞)
新「会社法」が成立
2005年 6月29日 (水) 15:05
国内外の企業を巻き込んだ合併・買収を容易にすると同時に、外資などによる敵対的買収への対抗策などを明記した会社法は二十九日午前の参院本会議で自民、公明、民主などの賛成多数で可決、成立した。国際化が急速に進む経済の変化に対応し、国際標準に沿ったルールの下で企業が競争できるようにするのが狙い。一九九〇年代から進めてきた商法改正作業に一応の区切りがついた。
施行は原則平成十八年。ただ外資を背景としたライブドアのニッポン放送株取得問題を受け、自民党内に「外資脅威論」が噴出したため、合併・買収を容易にする規定だけは十九年施行とし、各企業が防衛策を準備する期間を設けた。
goo ニュース - (読売新聞)
会社法が成立、敵対的買収への防衛策など盛り込む
2005年 6月29日 (水) 12:00
企業の合併要件緩和や敵対的買収への防衛策、有限会社制度廃止などを盛り込んだ会社法が29日午前の参院本会議で、自民、公明、民主3党などの賛成多数で可決、成立した。
企業活動の多様化に伴い、企業再編を容易にして効率的な経営による国際競争力の向上を図ることなどが目的だ。政府は一部の規定を除いて2006年度から施行する。
会社法は、商法の一部と有限会社法などを統合した新法。会社の形態については、有限会社制度を廃止し、取締役の人数制限や取締役会の設置義務がない「有限会社型」の株式会社を新たに認める。有限会社から株式会社への移行は経営者の判断に委ねられ、既存の有限会社はそのまま存続することも可能だ。
また、起業を促すため、これまで有限会社で300万円、株式会社で1000万円とされていた最低資本金制度を撤廃する。08年3月までの時限立法で認められていた「資本金1円での起業」を恒久化する。
敵対的買収への防衛策に関しては、買収者が一定割合以上取得した株式を、会社側が議決権を制限する株式に強制転換したり、買収者以外の株主の株式に対して自動的に新株予約権の発行を認めたりして、買収者の議決権比率を低下させるポイズン・ピル(毒薬条項)を導入。株主総会での議決に拒否権がある種類株式(黄金株)に譲渡制限を設け、買収者の手に渡らないようにすることができる規定も設けた。
企業合併については、合併先企業の株主に渡す合併の対価を、自社株以外の株式や現金でも可能とした。親会社の株式を合併の対価として使う「三角合併」ができるようになる。ただ、経済界から「外国にある親会社が、日本に設立した子会社を通じて日本企業買収を加速するのではないか」と懸念する意見が出ていることに配慮し、三角合併解禁などは07年から施行される予定だ。
goo ニュース - (朝日新聞)
新会社法、29日成立 有限会社を廃止、買収防衛策強化
2005年 6月29日 (水) 01:21
企業活動の複雑化に対応して、多様な会社のあり方を認める内容の新しい「会社法案」が28日の参院法務委員会で可決された。29日の本会議で可決、成立する。起業から組織再編、敵対的買収への対応まで、機動的な経営が可能になる半面、株主の権利保護や株主による経営監視の側面からは懸念材料も残る改正となった。
法案は、終戦直後に大改正された商法や戦前にできた有限会社法など、会社制度にかかわる法律を抜本的に見直し、わかりやすく一つにまとめた。この10年間、経済界の要望などを受け、経営手段の多様化やグループ経営の効率化などのため毎年のようにつぎはぎで行われてきた商法改正の集大成とも言える。政府は一部を除き、06年の施行を目指す。
法案では、有限会社制度を廃止し、株式会社に一本化。会社設立時に必要な最低資本金制度を廃止して、特例措置だった「1円会社」を認める。
また、株主総会での決議がなくても取締役会決議だけでできる簡易合併・分割の基準を緩和。株主への配当を年に何回するかなども自由化する。
さらに、敵対的な企業買収への防衛策も強化。買収者が現れた時点で他の株主の議決権を大幅に増やして買収を妨害する「ポイズンピル(毒薬条項)」を使いやすくする措置が導入される。
各企業の取締役は自由度が増すだけに、株主の代理人として機動的な経営を十分に実現しているか、絶えずチェックを受けることになりそうだ。
会社運営の約束事を記しておく定款の重要性も高まった。法律が企業活動の是非を細かく規定するのではなく、取締役が何をできるかなどについても「定款自治」を広く認める。株主が自ら総会でどのような定款をつくりあげるかが会社のあり方を決めることになる。
株主の最終的なチェック手段である株主代表訴訟については、提訴後に持ち株会社設立などの組織再編で株主でなくなった原告も、訴訟を続けられることになった。しかし、持ち株会社など親会社の株主が子会社の役員の責任を追及できる条項は盛り込まれなかった。
少数株主から会社側が株式を買い取り、株主の地位を退いてもらう道も広がった。少数株主の保護が不十分になるおそれが指摘されている。
現行の商法は1899年に施行。古い用語やカタカナの文語体が残っていたが、会社法案ではひらがなの口語体に改められた。